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静岡:古典芸能な週末

東日本大震災以来、好きだった古典芸能鑑賞とプツンと縁が切れていました。劇場に行く気持ちがまったく失せてしまったのです。心がそこで遊べないというか、そんなことより体力つけろというか。劇場に行くより、震災の帰り道に買ったロードバイクに乗れるようになるのが先決というか。

2年半以上経ち、その古典芸能、静岡で機会を得て2日続けて能と文楽に出かけました。

【薪能@三保松原】

三保松原の羽衣まつりで毎年開催される薪能で、番組のひとつは毎年必ず「羽衣」。物語の舞台がここ三保松原の地です。

いつもは鏡板に描かれている老松も、この日は本物の松。舞台の後ろには海が見え、潮騒が聞えます。

舞台

天女の出てくる夢のような物語の舞台になった現実の場所で、実際に存在している羽衣の松の隣に設えた舞台上で、新たに夢のように演じられるお能。考えると入れ子/入れ子で、劇中劇に永遠に入り込んでしまうような、夢が現(うつつ)か現が夢か、そんな不思議な気分になりました。

羽衣のあとは、樋の酒という狂言で大笑いし、もう一つの番組は「船弁慶」になります。義経が弁慶とともに船に乗って落ち延びる物語なので、実際に聞こえる潮騒がぴったり。この頃にはすっかり日も落ちて、闇夜に半月が煌々と輝いていました。

蛇足ながら、世界文化遺産の構成資産となった記念すべき年だったからか、静岡県知事、前文化庁長官、フランス大使、静岡市長、はごろも会長、エスパルス監督などの偉い人たちがいらしてました。砂地に置かれた傾いたパイプ椅子(連結されていて一脚ずつの座り心地調整が不可能)というちょっと座り心地悪い席に偉い人たちも座っておられたのね~。

折角の素晴らしい環境なので、もう少しどうにかならないのかと思う事も多々ありましたが、元々地元の催しなので、あまり作り込まずにこれでいいのかもしれません。


【文楽@グランシップ】

翌日は人形浄瑠璃です。「生写し朝顔話」の「明石船別れの段、笑い薬の段、宿屋の段、大井川の段」。テレビで言えば、古いけど「君の名は」。好きあう二人が離れ離れになって、なかなか会えない、すれ違う、一緒になれない。

阿曽次郎と深雪はお互い一目ぼれするが、離れ離れになり、そのうち阿曽次郎は偉くなり名前が変わって縁談を申し込むが、深雪は改名の事を知らないために拒否して家出をしてしまう。その後、失明するほど苦労して、瞽女(ごぜ)となって阿曽次郎を探し続け、嶋田の宿あたりに逗留している。

そのうち阿曽次郎が悪者の謀略家と一緒に旅する途中、嶋田の宿で投宿し瞽女になった深雪を認める。だが、悪者の前では守りたいプライバシーなので、その場では知らん振りして深雪に証拠の品を残して立ち去る。後で気づいた深雪が盲目の身ながら半狂乱で追い掛けるが、大井川の水かさが増して川止めになり、既に渡った阿曽次郎には会えないという不運。

橋 (2)

夏日とは言え一応10月なので胴抜きの、袷に見える単衣で行きました。前日の能には格のある帯を締めて行きましたが、文楽は気楽な縞帯で。そしてハンカチが大事。浄瑠璃語りに心つかまれ泣いてしまうの必定なので。案の定、ヒロインの深雪がかわいそうで、涙、涙。大井川に阻まれた悲しい運命を一緒に嘆いたのでした。

久し振りの浄瑠璃を聞き、太棹の響きも嬉しくて、文楽はやっぱりよかったです。


【嶋田宿の帯祭り、蓬莱橋】

その翌日、嶋田の宿の帯祭りを見物した帰りに大井川にかかる蓬莱橋に寄りました。

橋横

橋 (1)

ギネスが認める世界一長い木造の橋で長さ897m。深雪の時代にこの橋が架かっていれば、深雪も阿曽次郎を追いかけて行けたのにと、前日の生写し朝顔話の大井川の段を思い出しながら感慨深く往復したのでした。

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